老人・高齢者の便秘の原因と対策|筋力低下と生活環境の変化に要注意

高齢者の便秘について

現代の日本において、60歳以上の6人の1人が便秘に悩んでいると言われています。
また、それまでは女性の比率が圧倒的に多かった便秘に悩む人の割合は、60歳を境に急激に男女の比率差が狭まります。

 

厚生労働省による国民生活基礎調査によれば、それまで4倍前後の差があった便秘に悩む男女の比率が、60代以上になるとほとんど差のないレベルまで下がることがわかります。
(参照:平成28年 国民生活基礎調査の概況

 

この記事では、60代以上の高齢者に多い便秘の原因について挙げ、それに対する効果的な便通改善策について考えていきたいと思います。

 

手始めに、原因についてみていきましょう。
キーワードは『筋力』『善玉菌』『運動』です。

高齢者の便秘原因

原因その@:筋力が低下する

残念ながら、体力や筋力は加齢とともに落ちていきます。
便を外に排出する際には腹筋や腸腰筋などの体幹筋の力を使っているのですが、ここが衰えると便を外に押し出すことが難しくなり、便秘へとつながってしまうのです。
普段から運動をしたり畑仕事をしたりするなど、体を動かすことが習慣となっているという方であれば十分な筋力を維持できるのですが、そうではないという方は要注意です。

 

原因そのA:腸内の善玉菌が減少

人間の腸内には様々な細菌が棲んでいます。
そのうち、人間の体にとって良いふるまいをする細菌は善玉菌と呼ばれますが、この腸内善玉菌の割合は、年齢とともに減少していきます。

 

善玉菌の代表として挙げられるのがご存知『ビフィズス菌』と呼ばれる腸内細菌です。
このビフィズス菌は主に大腸に棲んでいて、腸管内をpHを下げ弱酸性に保つ働きをしています。
腸内が弱酸性に保たれることで、腸は酸の刺激により活発に動くほか、人間の体にとって悪い振る舞いをする『悪玉菌』の繁殖が抑えられるなどのメリットがあります。
ところが、乳児の頃は99%であった腸内細菌におけるビフィズス菌の割合は、成人になると10%ほどに、60歳を過ぎると1%までに落ち込んでしまうのです。

 

原因そのB:運動不足

それまで通勤などで歩く機会があったけど、定年などを機に家に居ることが多くなってしまった、という方は多いのではないでしょうか。
また、体力的な問題から、昔と比べて外出の機会が減ってしまったという方もいらっしゃると思います。

 

実は、腸は外部からの刺激をきっかけに活発に動くという性質を持っています。
車に乗っている時にトイレに行きたくなったという経験がある方がいらっしゃると思いますが、これはエンジンの振動をきっかけに腸が活発に動き、便意につながったものと考えられます。
外出の機会が少なく、同じ姿勢で長く過ごしていることが多いという方は、腸が非活発となり、そのまま便通の悪化につながってしまうのです。

 

高齢者の便秘 対策は?:運動と食事が便秘改善のカギ


これらの要因が重なり、60代からの急激な便通悪化へとつながっていると考えられます。

 

では、便通を改善するために何が出来るでしょうか?
ここでキーワードとなるのは『運動』と『食事』です。

 

対策その@:ウォーキングなどの軽い運動

運動をしろ、と言われると途端に面倒に感じる人も多いとは思います。
しかし、便秘の改善に必要な運動は汗だくになってヘトヘトになるような運動量は必要ありません。
むしろ気軽に楽しく続けられる程度が、便通の改善には丁度よいといえます。

 

おすすめなのがウォーキングです。
ウォーキングは排便の際に必要な体幹筋をバランス良く鍛えられる他、適度な上下動が腸へと伝わって刺激となり、腸の動きを活発化する効果があります。

 

また、疲れない程度に体を動かすことは、ストレス解消に繋がります。
ストレスもまた便秘の大きな原因の一つで、発散することでリラックスや睡眠の質を上げ、内臓の働きの活発化も期待できます。
まずは30分程度の散歩から、気軽に始めてみてはいかがでしょうか。

 

対策そのA:ヌルヌル・ネバネバ食品を意識して摂る

腸内細菌を整え便通を改善するためには、毎日口にする食事もまた重要になってきます。
近年は長寿のために肉類を摂ることの重要性が盛んに言われています。
もちろん、肉類が体に良いことは間違いありません。
だからといって肉ばかりの食事と続けていると、腸内は悪玉菌だらけになってしまい、便通にとどまらない悪影響が体全体に出てきてしまいます。

 

腸内環境を改善するにあたって、意識的に摂ってもらいたいのが、ヌルヌル・ネバネバした食品と、発酵食品です。
海藻類をはじめとしたヌルヌル食品、オクラやモロヘイヤをはじめとしたネバネバ食品には水溶性食物繊維という成分が多く含まれています。
水溶性食物繊維は胃で消化されずにそのまま腸に届き、便の水分を保って柔らかくするほか、腸内に棲む善玉菌の極めて良質な餌としてはたらくため、便通のためにとても良い成分です。
また、納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品は、それ自体に活きた善玉菌を多く含むため、腸内環境の改善に大きく寄与します。

 

便秘薬の使用は一時的に

「お通じが悪い」という時の対処法として、真っ先に便秘薬(下剤)の使用を思いつく方も多いでしょう。
確かに、便秘薬は今お腹に詰まっている便の排出には強い効果を発揮します。
ですが、便秘薬には今詰まっている便を出す力はあっても、便秘の原因を解消したり、便秘体質を改善したりといった効果はありません。
逆に、連続して使っているうちに体が慣れてしまい、徐々に効果を発揮しづらくなってしまう『耐性』や、便秘薬を飲まないと出せない『依存性』などのリスクが存在します。

 

もっとも、お腹に便が溜まったままでは、上記の便通対策も効果を十分に発揮しきれません。
長く便秘で苦しんでいる時は、ぜひ便秘薬の力を借りて一度スッキリしてしまいましょう。
しかし、ただ便秘薬を飲むだけでなく、並行して便秘原因の解消を行い、便秘体質の改善にも努めてください。
便秘薬は一時的な使用にとどめ、便秘薬の力だけに頼るということは避けるようにしましょう。


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